この度東京画廊+BTAPでは7月25日(土)より「桂ゆき」展を開催致します。
大正生まれの桂ゆき(1913-1991)は、戦前から紙やコルクを用いたコラージュ作品を制作し、その後も抽象から風刺・戯画的なものまで、多彩な技法とスタイルで多くの作品を生み出しました。昭和の戦前期には東郷青児らのアヴァンギャルド洋画研究所に通い、二科展の前衛グループ・九室会の創立メンバーとなるなど、日本前衛絵画の創成期に深く関わっています。第二次世界大戦前後の日本美術の一貫性を読み解く上で興味深いアーティストの一人です。
1961年の東京画廊の個展は、アフリカや欧米を含む6年間の海外生活から帰国した直後に開催されました。このとき桂は、和紙をコラージュし、その上から着彩を施して、モノクロームのペインティングを制作しています。そこには、それまでの風刺的な具象作品とは全く異なる、抽象表現主義など当時の西洋美術の影響が見て取られます。桂はその後、寓話的な画風に再転換するのですが、そこに至る桂の画業において、重要な画期と位置付けられるでしょう。
本展では、滞米中に制作された1961年個展の作品を中心に、その前後の作品を展示いたします。桂のコラージュ作品の特徴は、外的な文脈を取り込む知的操作というよりは、物質の触覚的側面を重視することにあります。このような物質的な探究は、桂の画業を貫く軸になっています。一方、桂の作品の最大の魅力として、その自由な制作態度を忘れるわけにはいきません。世界の美術が前衛運動によって大きく揺れ動いた時代において、その環境に身をおきつつも、土着的な独自の作品を生み出し続けました。
皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております。