20世紀を代表するアーティストの一人サイ トゥオンブリー(1928-2011)の、日本の美術館としては初の個展を開催いたします。《描画された詩》とでも形容すべき絵画で知られるトゥオンブリーは、高松宮殿下記念世界文化賞(1966)やヴェニス ビエンナーレ金獅子賞(2001)など、世界的に評価されています。本展はサイ トゥオンブリー財団の協力により、1953年から2002年までの紙の作品(ドローイング、モノタイプ)約70点を紹介するものです。
子供の落書きにも見える線の戯れのような作風は、内なるエネルギーを《手で描く》という身体的所作によって画面に炸裂させる即興性と激情性に満ちています。アメリカ生まれですが、1957年以降イタリアにも拠点を持つようになってからは、神話・歴史・文学作品にヒントを見出し、1980年代後半からは、色彩の面でも華やかさと激しさを強めて行きました。紙の作品には、カンヴァスの絵画にも増して、トゥオンブリーの速度、激情、直感がストレートに露出していると言えます。
本展は、2003年にロシアのエルミタージュ美術館で開催され、英米独仏に巡回した展覧会を再構成したものです。同展は、ジュリー シルヴェスター(現・サイ トゥオンブリー財団)が企画し、トゥオンブリー自身も作品の選定に関わりました。