石黒宗麿(1893-1968)は、現在の富山県射水 (いみず) 市に生まれ、25歳のときに、世に「稲葉天目 (いなばてんもく)」と称される曜変 (ようへん) 天目茶腕に感銘を受け、陶芸の道を志したと語っています。特定の師を持たず、中国の唐・宋時代の古陶磁の研究を通じて陶芸技法を体得し、独創的な陶芸の世界を築き上げました。35歳で京都・今熊野 (いまぐまの) に移り住み、後に八瀬へと窯を移し、古今東西のさまざまな技法に挑戦します。戦後はチョーク釉 (ゆう) の新技法や藍彩、緑彩などの低火度色釉を駆使した独自の作品を生み出しました。昭和30(1955)年の重要無形文化財保持者(人間国宝)制度創設と同時に最初の保持者に認定され、以降、43年に亡くなるまで、多彩な技法を用い、自由な気分と近代感覚に溢れた斬新で品格ある作品を生み出し続けました。
本展は、郷土富山が誇る陶芸家、人間国宝石黒宗麿に焦点をあて、最新の知見に基づく約20年ぶりの本格的な回顧展として開催します。陶芸作品約120点を技法にしたがって分類し、新たな年代観に基づき紹介するとともに、書画作品を紹介することにより、石黒宗麿の芸術の本質に触れていただけることでしょう。
また、石黒宗麿と交流のあった清水卯一 (しみず ういち) や原清 (はら きよし) をはじめとする、人間国宝の作家 たちの作品10点とともに、奥深い陶芸の魅力を広く紹介します。