私たちは、経済効率や利便性を優先させたあまり、これまでに数多くの匠と呼ばれる職人の貴重な手仕事や人材を失ってきました。写真の世界でも同様に、便利に撮影できるデジタル化に伴い、長い間培われてきた、手間ひまをかけた撮影や暗室作業等の手仕事、技術、その周辺機材、人材が失われています。それは電気信号に置き換えられた画像ではなく、化学反応による銀塩写真にしか出せない独特の奥行きのある表現が失われることを意味します。音楽家が様々な楽器を奏で、多彩な表現ができるように、画家が筆や絵の具を使い分けられるように、私たち写真家も表現手段の選択肢として、フイルムや印画紙を次世代に残していきたいのです。
今回のテーマは「撮り下ろし」。賛同写真家34名が二人一組となり、それぞれが決めたテーマで作品を撮り下ろします。