2015年5月1日より、アートコートギャラリーでは、昨年4月に急逝しました國府理の展覧会を開催します。
彼を偲ぶと同時に、美術家・國府理として目指したことを「未来」に繋ぎたく、本展を企画しました。
◎ 國府理の仕事 約15点
國府理が共に風を起こし、共に旅をしてきた代表作を展示します。
ワーゲン・ビートルを改造し背中に載せたエンジンでプロペラを回転させて飛行するクジラの化石《ROBO Whale》(2008-09)、ヨットのように風の力で走る《Sailing Bike》(2005)、48V-800Wの電動モーターで動く《電動三輪自動車》(1994-04)、パラボラアンテナの苔庭を載せて走る《Parabolic Garden》(2010) 、小作品、ドローイング、記録写真・映像など。
◎ 仲間たち 65点 (作品:37組、文章:28名)
計65組によるさまざまな「國府理の仕事」への想いを集め、オマージュ作品、共同制作作品、評論、エッセイを展示します。
野村仁らとソーラーカーを共同制作し、その車でアメリカ大陸を横断したSolarPowerLab.のプロジェクト記録や、ロボットクリエイター高橋智隆やヤノベケンジらと共に制作した乗用二足歩行ロボット《CHOROBO》、作品パーツに顔写真を協力提供していた木村太陽《Everything Merges With the Night》、共にとコラボレーションを構想していたという榎忠の《ダンボー014》、未来への思考と欲求を促す装置である植松琢麿《earth palette-Jan.23.2015》など、37組の作品。 「國府理の仕事」に寄せての評論、エッセイ、28名の文章。
本展を通して多角的に國府理の仕事を掘り下げながら、新たな見地の発見に繋がりましたら幸いです。機械と自然とが融合・対立・循環を繰り返すエネルギーを考察しながら、常に「今・ここ」から「未来」を模索していた國府理。その「未来」を皆様と共に探し求めたく、ご高覧の程、よろしくお願い申し上げます。
“自分は人とはいえ物質的なものの延長だと感じているところがあって、機械工作の延長上に扱い始めた植物というのは、
対人間へと至るまでの過程のような気もしています。”
(「國府理インタビュー 聞き手:池上司 2011年3月2日」 『國府理作品集 Osamu Kokufu』、アートコートギャラリー、2011、p.26)
乗り物の形態をモチーフに、國府理は実際に稼働する動力と機能を備えた大型の立体作品を制作・発表しました。様々な工業製品を素材に用いながら、独自の設計思想と構造美を追求して必要な部材を自ら作り出し、ユニークな自動車やバイクを数多く手掛けます。國府の造形哲学と世界観は“KOKUFUMOBIL”の名で親しまれ、現実の風景の中を走らせることで完成する動く彫刻として、想像力と未来の情景を喚起し人々を魅了してきました。
その後、乗り物に植物や生態系を組み合わせ、「移動」と「循環」をテーマに自然と人間の営みの構造を反転させて寓話のように物語る庭や温室型の作品によって、創作スケールを飛躍的に拡大させます。機械文明に埋もれゆく現代社会をアイロニカルに問う一方で、モノづくりへの純粋無垢な魂を乗せた國府理の表現は、多くのクリエイターたちに影響を与えました。
國府理が夢を追うように求めて止まなかったもの、作品化して私たちに問いかけ続けたものをもう一度丁寧に確かめながら、國府理が次に制作しようとしていたものは何だったのだろう…!? 多くの皆様と、未知の國府理にもイメージを膨らませ、語り合う機会にできればと願います。また、本展では、生前より國府理を支え愛する美術界の諸氏にも特別出品を依頼し、さまざまな「國府理の仕事」とその想いを集めて展示します。