栗木達介は、1943年愛知県瀬戸市の陶家に生まれ、京都市立美術大学で富本憲吉や近藤悠三、藤本能道、清水裕詞に学びました。1966年卒業して瀬戸で作陶活動を始め、オブジェや自由な表現をうたう現代陶芸が昂揚するなか、朝日陶芸展や日本現代工芸美術展、日展等で大賞の受賞を重ねて一躍台頭し、まさに陶芸界の次代を担う作家として高い評価を獲得しました。1983年からは母校の京都市立芸術大学で教鞭をとって後進の指導を行いました。2013年に急逝し、その才能が大変惜しまれています。
既成の伝統や常識にとらわれず、やきものの素材と特質を自らの視点と思考でとらえた造形を繰り広げ、現代陶芸に対する問題意識を表してきました。手びねりのオブジェ陶で独自のかたちを追求し、《しろとぎんの作品》(1974年)や《這行する輪態》(1976年)などの“動くかたち”を主題にした作品で圧倒的な技量と存在感を発揮しました。1980年以降は、陶の概念を再認識して器の構造を見直し、かたちと装飾とを一体的にして新たな形態を構築しました。「銀緑彩文陶」や「銀紅彩地紋陶」、「巻弁陶」、「形を離れる帯模様」、「組帯壺」など、次々と清新で強靭な造形を展開して現代陶芸の鬼才と呼ばれました。
本展は、初期の器を含め代表的なオブジェ作品、そして後年の伝統の器とオブジェの狭間に在る新たな陶芸を追求した作品約90点を厳選して構成します。自らの思想に徹した造形とその美をとおして、現代陶芸の可能性を問い続けた栗木達介の創作の世界を展観いたします。