ツヤツヤ、ピカピカ、ボコボコ、ザラザラ…。工芸作品を眺めているときに、こんな言葉が口からこぼれたことはありませんか? 擬態語や擬声語またはオノマトペと呼ばれる語が、日本語には豊富にあります。今回の展覧会は、このオノマトペを通して工芸の質感に迫る試みです。色やかたち、歴史や地域性など、工芸をみるポイントはさまざまですが、目にも手ざわりにも好ましい質感の追求は、工芸に期待するイメージの重要な部分を占めています。寒さや暑さをしのいだり、硬くてしっかりしているのか、もっとしなやかなのか、環境の変化から人それぞれの好みまで適応させるのが質感という造形要素です。しかしその情報量の多さゆえに、質感を数値化するのは困難です。たとえ計測を試みたとしても、それを手に取った人の心理や状況によって評価はまったく違ってしまうものだからです。そこで着目したいのがオノマトペです。一見子どもっぽかったり、軽々しいような印象をもたれることのあるオノマトペですが、言葉の響きやリズム、またしばしば語源においても、工芸のエッセンスを直感的につかみとっていることが少なくありません。きわめて個人的な感覚が含まれるのも確かですが、だからこそ情報量の多い質感を多角的に捉えることが可能なのです。
今回、工芸館の会場6室に揃えた質感は「ツヤツヤ」「ピカピカ」「スケスケ」「ボコボコ・ゴツゴツ」「ザラザラ・サラサラ」「ダラリ・ジワリ・スベスベ」――前半は光との関係を、また後半では肌合いや模様をつくる過程に焦点をあてました。リズミカルな言葉をつぶやきながら、私たちを魅了してやまない質感を堪能しましょう。子どもと大人とそれぞれにセルフガイドもご用意しました。スベスベでツヤツヤ、ピカピカでボコボコなものを探してみたり、皆さん自身でもっとぴったりなオノマトペを考えてみるのもお勧めです。