菊川多賀 (きくかわ たか)(1910-91)は札幌生まれ。北海女学校(現札幌大谷中学校・高等学校)に学び、14歳の年、一家の移転で東京の女学校へ転校します。ほどなく病気療養のため同校を中退。以後、病との戦いを重ねながら歩みます。戦後、院展同人の堅山南風(かたやま なんぷう)門下で本格的に作家活動を始めたのは37歳からでした。多賀は画業初期には穏やかな風俗画を描きますが、やがて、生来、病弱な自らの宿命と重ね合わせるかのように、生命の重さや人間存在を問うような作品を制作します。さらに、テーマを女性群像に絞り込み、抑制された色彩に線を生かした独自の造形により深い精神性をたたえた表現を展開、院展を舞台に活躍しました。当館では1987年の菊川多賀展以来、28年ぶりの回顧展となります。代表作を一堂に展覧し、菊川芸術の精華をご紹介します。