日本に写真術が伝えられたのは江戸末期のこと。明治期には主に記録としての実用性が評価されて発展しますが、大正期以降は芸術的な作品がさかんに制作され、写真ならではの自立した表現も追求されるようになりました。戦前から戦後にかけては写真の持つ社会的な役割がクローズアップされます。高度経済成長期以降、広告やファッション写真が隆盛する一方で、私的な視点から日常的な光景をとらえた写真も注目されるようになりました。近年では現代アートとして制作される作品も多く見られます。
出品作品は、長年、感光材料の開発・生産を行い日本の写真文化を支えてきた富士フイルム株式会社の創立80周年を記念して創設されたコレクションです。すぐれた銀塩プリントによる、日本写真史を飾る101人の写真家それぞれの「この1枚」を通して、改めて写真表現の多様な可能性を知ることができるでしょう。