本展では、油彩画家・川口起美雄の初期作品から最新作により、その画業を振り返ります。
川口起美雄は、1951年長崎に生まれ、1974年から77年にかけてオーストリア国立応用美術大学に在籍。ウィーン幻想派の画家ヴォルフガング・フッターに師事し、北方ルネサンスの混合技法を学びました。1985年には文化庁在外研修員としてイタリアに留学、ウフィッツィ美術館での研修をへて、1987年、第30回安井賞展佳作賞を受賞。現在、武蔵野美術大学教授。
川口作品の特徴は、古典技法と幻想的な画面にあります。その透き通った画面は、ブリューゲルやボッシュなど15世紀のオールドマスターに学んだ、テンペラと油彩の混合による古典技法の徹底した追究に裏打ちされています。また、調和の取れた構図には、宙に浮かぶ船や隕石、水面に見立てられた芝生などが描かれ、時間の流れや現実の空間を転倒させた幻視の風景が広がっています。フッターらの影響を受けた幻想的表現と、日本ではめずらしい古典技法を自在に操った独自の具象表現を紹介いたします。