人々は自然を描き、その中に遊んで精神をくつろがせることを楽しんできました。絵画の中の理想的な山水風景は時代と共に変化し、架空の楽園から実在の名勝まで、さまざまな主題が制作されました。山水図における鑑賞対象は、それぞれの画家が工夫を凝らして表した平面上の三次元空間から、それを形作る多種多様な筆墨まで、多岐にわたっています。
本展覧会では、日本、中国・朝鮮、版画の三章に分けて、山水図の魅力を紹介します。まずは、中国南宋時代の宮廷絵画に憧れた日本の室町時代の山水画家、強固な伝統継承意識を持つ狩野派、より自由に筆墨をふるい清新な画面効果を追求した江戸時代の円山派や南画家たちの作品を通じて、日本の山水図の流れを概観します。続いて、乾いた筆や水気を多く含んだ筆を自在に操り、高度に洗練された筆墨法を披露した、中国の明・清時代の山水画家たちの作品を展示します。最後に、彫りと刷りによる、肉筆とは異なった硬質な美しさを持つ山水版画の世界を紹介します。 (担当 植松瑞希)