東洋では、花と鳥は神秘的なもの・おめでたいものの象徴として、また自然の美しさの代表的存在として愛され、工芸や絵画に多く表されてきました。
天と地を自由に行き来する鳥は信仰の対象となり、中国では古くから玉器や青銅器などに鳥の姿が表されました。季節が一巡するごとに繰り返し咲く花もまた尊ばれ、蓮の花の文様を中心に、様々な器物を飾りました。それぞれ愛されてきた花と鳥が結び付き、花鳥文として隆盛したのが唐時代です。西域の文化の影響を受けつつ、瑞鳥と唐草文を組み合わせた壮麗な花鳥文が鏡や飲食器などを豊かに彩り、その文様は朝鮮や日本にも多く取り入れられました。工芸の花鳥文は、瑞鳥や唐草文が中心となっていましたが、花鳥画の隆盛とも関わり、自然の花に鳥たちが集う絵画的な文様も増加し、多彩に展開していきます。
絵画の世界では、唐の頃に「花鳥」という画題が成立し、五代から宋時代にかけて大きく発展しました。花鳥画の範囲は広く、花、鳥の他、樹木や草、虫、魚、獣の組合せや単独のものも含みます。線と面、墨と彩色、写実と写意など、様々な技法・様式と関わりながら、時代や地域の好みを反映した花鳥画が描かれてきました。日本の花鳥画は、主に中国の影響を多く受けながらも、特色をもって展開します。特に、海外からの情報が多く入るようになった江戸時代半ば以降は、清より来日した沈南蘋の作品や西洋の書物・絵画など、新しい情報に刺激を受けつつ、独自の美意識をはたらかせ、多様で魅力的な花鳥画が生み出されました。
時代や国、ジャンルを超えて豊かに展開した花鳥の美麗な世界をご覧頂きます。
(担当 宮崎もも)