戦後間もない1951年、一般的にはまだ渡航が難しかったこの時期に、清川泰次(1919-2000)は単身、アメリカへ渡りました。アメリカ渡航前の清川泰次は、二科展に作品を出品したり、銀座の資生堂ギャラリーで個展を開くなど、画家としての活動を本格的にはじめていました。しかし、新しい絵画表現を求めていた清川泰次は、抽象表現主義などが台頭し、世界的に注目を浴びていたアメリカの美術に直に触れるため、渡米を決意し、船で幾日もかけ、憧れの地アメリカへと向かいました。しかし、シカゴに着くと、現地で面倒をみてくれる予定だった人が、急きょ亡くなり、清川泰次は、アルバイトなどをしながら絵画制作に励むことになります。巨大なビル群が立ち並ぶ摩天楼の大都市シカゴは、清川泰次の眼にはどのように映ったのでしょうか。
本展では、日本と全く異なる環境の孤独な海外暮らしの中で、具象的な表現から抽象的な表現へと模索していた、清川泰次の約3年間のアメリカ時代の作品を中心に、昨年新たに収蔵された作品も加え、約15点の絵画作品をご紹介します。また、同時期に清川泰次がシカゴの街並などを撮影した、当時としては珍しいカラー写真も併せて展示し、絵画との関連を見ていきます。