「風を屏 (ふせ) ぐ」の文字が表すように、屏風は風よけや、人目を遮り室内の間仕切りに用いる調度品です。『日本書紀』によると、七世紀末の飛鳥時代頃に朝鮮を経由して日本に伝わったとされ、今日私たちが目にする屏風は、室町時代頃に考案されました。桃山時代から江戸時代にかけて、権力者たちは贅を尽くした屏風や障壁画で居室を飾ります。金箔を貼り、美しい絵を描いたきらびやかな屏風は贈答の品としても広く用いられました。
本展では金が放つまばゆい色彩「金色 (こんじき)」を主題に、館蔵の屏風の中から選りすぐりの物語絵と花鳥図を展示します。物語絵からは、項羽 (こうう) と劉邦 (りゅうほう) の争いを描いた「秦漢物語図屏風」(江戸時代前期)など戦いにまつわる故事を描いたものをはじめ、「源氏物語図屏風」(同)や、源氏物語宇治十帖の舞台を彷彿 (ほうふつ) とさせる「柳橋水車図屏風 (りゅうきょうすいしゃずびょうぶ)」(同)のように、雅 (みやび) な平安王朝文学の世界を描いた作品などをご覧いただきます。花鳥図からは、近年、狩野探幽の父である狩野孝信の作ではないかと指摘されている重要美術品「桐鳳凰図屏風」(江戸時代初期)をご覧いただきます。本作は八曲一双の華やかな屏風で、大画面で迫力ある表現が可能な屏風の特性を存分に発揮しています。その他にも、蛤の内側に金箔を貼り、細密な絵を描いた重要文化財「綾杉地獅子牡丹蒔絵婚礼調度」の「合貝」のうち、源氏物語・伊勢物語の名場面を描いた作品や、源氏物語に意匠を求めた、「初音蒔絵硯箱・文台」など、屏風の画題にちなんだ工芸品もご覧いただきます。
金色の屏風に描かれた勇壮な合戦図、情緒あふれる物語絵、そして絢欄豪華な花鳥図が織りなす世界をご堪能いただければ幸いです。