きれいさびとは、優美さ華麗さの中にさびを秘めたもの。
春翠のお好みは、ほどよい装飾性をもった端正な品々。
大正時代、50代になった春翠は、次第に幼少時に慣れ親しんだ日本の伝統美術に心惹かれるようになります。自らの美意識に適った茶道具を取り合わせて歴史に残る名茶会を度々開いたのもこの時期です。そして、その主要な舞台となったのが大正4年(1915)に完成した天王寺茶臼山(今の大阪市立美術館・慶沢園)の本邸でした。ここではまた、園遊会など様々な催しも行われ、春翠の趣味が隅々まで行き届いた室礼が客をもてなしました。本展では、春翠が好んだ伝統的な美意識に基づく名物茶道具や絵画の逸品(小井戸茶碗 銘六地蔵や伊藤若冲の花鳥画ほか)とともに、それらが鑑賞された今はなき茶臼山本邸の様子を資料にて紹介します。