ジョアン・ミロ(1893~1983)はピカソ、ダリとともにスペインが生んだ20世紀最大の巨匠の一人です。ミロは1893年、地中海に面したスペイン・カタルーニャ地方の主要都市バルセロナに生まれました。カタルーニャの明るい太陽、青い海のもとで育った彼は、1919年パリに出て、シュルレアリスム運動に参加しました。
以来、ミロはこのシュルレアリスム運動の重要な画家の一人として制作活動を展開することになりますが、そうしたミロの心のなかにいつも横たわり続けたものは、彼の生まれ故郷カタルーニャの大地や畑、さらには太陽、月、星、鳥、動物などの自然とそこに生きた人々でした。こうしたミロがこよなく愛したカタルーニャの自然と人、さらには彼の豊かな想像力を通して生まれたものこそ、生命感を象徴する抽象芸術であり、また子供のように天真爛漫で明るく詩的な造形世界でした。
今回の展覧会は、ミロが円熟の境地に達した1960年代から70年代の油彩、アクリル、彫刻、版画など約80点の作品を紹介します。ミロの作品には絶えず太陽、月、星などを主題とするものが多くありますが、展覧会テーマのもとになった『太陽の賛歌』もその一つです。これは、1975年に出版されたミロの挿絵版画本で、ミロがアッシジの聖フランチェスコの万物を讃える宗教詩に共感して創作したものです。ここにはミロ芸術の神髄が集大成されています。
今回展示される作品は、バルセロナのミロ財団所蔵のもので、同財団の協力のもとに日本で開催されるものです。ミロ芸術の作品を特徴づける単純で力強いフォルムと鮮烈な色彩、独特の記号による造形言語などミロの魅力をあますところなく表現しています。これらは人類が共通して理解できる、まさに21世紀の芸術と呼ぶにふさわしいものでしょう。