時に流浪の生活に身を置きながら描くことの本質を見つめ、独自の世界を構築した熊谷守一と朝井閑右衛門。
熊谷は、明治37年に東京美術学校を首席で卒業し、画家としての将来を期待されながらも、家庭の事情で画業に専念できない時期もあり、還暦を間際に控える時期まで特別な注目を集めることはありませんでした。しかし、58歳から本格的にはじめた日本画を転機として、彼の画面には極端なまでの簡略化が行われ、次第に「守一様式」と呼ばれる平面で明快な表現を確立していきます。
一方、昭和11年の文部省美術展覧会において500号の大作《丘の上》で文部大臣賞を受賞し、若くして一躍時の人となった朝井は、気に入ったモチーフを徹底的に追求する傾向があり、幾度となく繰り返される試行錯誤によって生み出された作品の数々は、詩人の草野心平が「絵具を耕した」と評したように、時を経るにつれて、色彩にあふれた厚塗りの「閑右衛門様式」として完成していきました。
この度は天童市美術館、横須賀美術館にご協力いただき、孤高の画家と謳われるこの二人の画家の作品を一堂に会しご紹介します。