20世紀を代表する陶芸家、ルーシー・リー(1902-1995)が惜しまれつつ世を去って20年が経ちますが、彼女の遺した仕事は益々輝きを増して世界中に光を放っています。本展はこれを機に、初期から晩年に至る約200点の作品で彼女の足跡を辿り、その魅力に迫ります。展示作品の大半が日本初公開となるのみならず、今回新たに発見されたウィーン時代の作品もご覧いただけます。
ルーシー・リーは1902年にウィーンの裕福なユダヤ人家庭に生まれました。19世紀末から20世紀初頭のウィーンは、建築家ヨーゼフ・ホフマンが活躍し、建築から衣服までを総合的に調和させた美的空間の実現を目指したウィーン工房が誕生するなど、新たな美的価値が盛んに創出される先鋭的な空気がみなぎる都市でした。ルーシーは、ホフマンが教鞭をとるウィーン工業美術学校に入学。その類稀なる才能は既に学生時代より注目を集め、卒業後はブリュッセル万国博覧会(1935年)で金メダルを受賞するなど、彼女は国際的な活躍が期待される存在でした。しかし戦禍を逃れるために1938年にイギリスへの亡命を余儀なくされます。イギリスでは、バーナード・リーチやハンス・コパーという偉大な陶芸家達との出会いに恵まれ、幾多の困難を乗り越えて独特の造形美の世界を開拓します。そして1990年に病に倒れるまで、ロンドン市内の自宅で作品を作り続けました。
色鮮やかな美しい釉薬による加飾と抑制されたフォルムが生み出す個性的で格調高いルーシー・リーの芸術世界は、その果敢な生涯とともに国境や世代を超え人々に、勇気とインスピレーションを与え続けています。