自然の景観を活かし、草花を巧みに配して変化に富んだ光景をつくり出すイングリッシュ・ガーデン(英国式庭園)。それらの植物の多くは、大航海時代以来、その新奇な美しさに魅せられたヨーロッパの人々により冒険と探求の結晶として集められたものです。植物研究と庭づくりへの情熱により、庭園は文化として豊かに発展しました。世界各地からもたらされた植物は、科学的探究の成果に芸術性が融合したボタニカル・アート(植物画)としてさかんに描かれ、鑑賞熱も高まりました。植物はまたデザイナーたちを魅了し、室内調度や服飾品へと溶け込み日常生活に彩りを添えています。
18世紀半ばに開園したキュー王立植物園は、いまや最先端の植物学の研究機関であり、また、22万点のボタニカル・アートを収集する世界有数の植物園です。2003年にはユネスコ(UNESCO)世界遺産にも登録されました。
本展はその発展に寄与したジョセフ・バンクスやチャールズ・ダーウィンらの研究者、往時の植物画家たち、ウィリアム・モリスをはじめとするデザイナーなど、イングリッシュ・ガーデンにまつわる人々に注目しながら、数世紀にわたる英国人の植物への情熱をひもとくものです。同園が所蔵する黎明期から現代までのボタニカル・アートの名品、さらに植物を着想源としたデザイン・工芸品を含めた約150点を展観します。