岡村桂三郎(おかむら けいざぶろう、1958- )は、東京都大田区に生まれ、1979年から1988年まで東京藝術 (げいじゅつ) 大学・大学院で日本画を学びました。1994年には五島記念文化財団研修員として渡米、その後、東北芸術工科大学教授を経て、現在は多摩美術大学の日本画専攻教授を務めています。2004年の芸術選奨文部科学大臣新人賞をはじめ、2008年に第4回日経日本画大賞、2012年に第18回MOA岡田茂吉賞MOA美術館賞を受賞するなど、現代の美術界を牽引 (けんいん) する気鋭の画家として注目を集めています。
岡村は、人類の日常的な営みや風土に根差した体験・感覚を端緒 (たんしょ) とした、その豊かな形態、生命力のイメージを作品に表現しています。制作のモチーフには、想像上の神獣や魚、人の顔などを独特のイメージで取り上げており、作品には、板を焼き焦がして方解末 (ほうかいまつ) を塗り重ね、スクレーパーで表面を削るなどの斬新な技法が用いられています。大型「画面」へ、空間への圧倒的な存在感をもって特徴的に映し出される岡村の作品には、日本画材料を用いながらも、既成の「日本画」という枠にとらわれない独自の創作の形が窺 (うかが) われます。
本展では、人間の原初的な感性の中に表現の可能性を見据えながら制作した、初公開の新作を含む作品10点を、当館展示室の空間に合わせて展示します。展示空間に立ち並ぶ生命力を孕 (はら) んだ作品の数々を通じて、古来より人類が感じてきた感覚の原点を意識しながら、現代の人間の感性に迫る岡村桂三郎の表現の形を体感ください。
また、特別出品として、従来の様式にとらわれない日本画の新しい表現を求めて創作に取り組んだ秋野不矩の作品20点を展示します。