伝統はつねに現在する。伝統はつねに現在し、工芸は美の根源にある。こんにち、工芸と呼ばれている世界は、かつては、わが国の美の領域のすべてなのであった。明治維新以来、西欧から導入された美術とわが国伝来の工芸は、それぞれ別個の展開を遂げてきたようにみえるけれども、われわれの美の意識は、いまもなお、この伝統工芸の名を負う世界に根ざしていることを自覚する。歴史 (とき) の移り行きに耐え、かつそれと呼び交いながら、われわれの生活 (くらし) の襞 (ひだ) に営まれている美の生産を、ともども確かめ合う機会となることを願って、本展を開催する。
陶芸・染織・漆芸・金工・木竹工・人形・諸工芸の7部門にわたり、応募作品300点の中から鑑査に合格した入選作品219点を展覧いたします。