花と鳥は自然の美しさの象徴として、文学や美術などを通じて古くから日本人に愛されてきました。特に絵画では、色や形だけではなく花の咲いて散るさま、鳥の動く姿もモティーフとして描かれています。また、花鳥が独立した画題となってから、屛風などの大画面においては、春夏秋冬の花と鳥が一つの画面に集う、華麗な四季花鳥図が好まれました。一方で小画面では、花弁や鳥の羽の一枚一枚まで緻密に描き込んだ花鳥画が人気を博します。写生に基づく写実的な表現から、構図や色に工夫を凝らした装飾性豊かな作風にいたるまで、バラエティに富んだ花鳥画が現代でも数多く生み出されています。
本展では、明治以降の作品を中心に、花の表現に新たな技法で挑んだ菱田春草 (ひしだ しゅんそう)《白牡丹》や速水御舟 (はやみ ぎょしゅう)《翠苔緑芝 (すいたいりょくし)》、鳥の姿を徹底した観察に基づき描写した竹内栖鳳 (たけうち せいほう) の《みゝづく》や上村松篁 (うえむら しょうこう)《白孔雀》など、当館所蔵の優品を選りすぐって紹介いたします。四季折々の自然に注がれた画家たちのまなざしや花と鳥に込められた人々の思いに触れるとともに、伝統の中で磨かれてきた多彩な花と鳥の表現をご覧ください。