人類はどの民族も子どもたちに昔話を口伝えしてきました。私たち日本人も次の世代の子どもたちへ伝えたいメッセージを、昔話を通して何百年にもわたって語り継いできました。それは、生きていくための知恵や勇気、親切や正直といった人生観だけでなく、自然観、世界観といった普遍的な要素を含み、子どもの感受性や想像力の源泉となるものです。
文章だけでは確かなイメージを結べない幼い子どもたちも、昔話にイラスト(絵)がつく昔話絵本によって物語をイメージしやすくなります。幼い頃に昔話や昔話絵本を通して物語の面白さやすぐれた絵の魅力を実感することは、その後の読書や文学の扉を開くきっかけになります。
かつて日本の子どもたちは、両親や身近な大人から昔話を聞いて育ちました。しかし、少子化、核家族化、都市化の急激な進行によって、子どもたちが昔話を聞いて育つ環境が大きく変化していきます。身近な家族の声と言葉で、子どもたちに昔話や昔話絵本を読み、語ることの大切さが、今あらためてさけばれています。
本展は、「昔話の世界」「昔話絵本の世界」の二部構成の展示と、講演会、絵本美術館紀行、おはなし会、ギャラリートークなどの多彩なイベントを通して豊かで魅力的な昔話と昔話絵本の世界を紹介します。
「昔話の世界」のコーナーでは柳田國男の紹介を中心に、「昔話絵本の世界」のコーナーでは昔話絵本の傑作約10点、原画150点の展示を予定しています。