シュウゴアーツでは、金氏徹平、ケサン・ラムダーク、リー・キットの3人展「MATERIAL ANALYSIS」を開催致します。
3名のアーティストは、それぞれの文化的バックグラウンドも、活動の拠点も異なりますが、素材へのアクセスの仕方とその感覚、もしくは意識という点については、共通点がいくつかあるように感じられます。彼らの素材の選択理由は様々ですが、自らの意志を定着させるにはいずれも適確かつ確信的です。
金氏徹平は、実体の不確かなものを触覚化させ、物質性が強調されるような作品を制作します。液体が作品として硬化してとどまったり、日用品に粉末がかけられることで、粉末の物質としての重量の軽さや対比する日用品の重量、性格の違い、またその実体の不確かな白い粉末が一体 何なのであるのか等、感覚へ訴えかけるような作品を制作します。近年は、版画や絵画を使った作品、舞台など、美術的ミディウムさえも素材として使用するような作品も多く手がけています。
ケサン・ラムダークは、インドに生まれ、チベットのオリジンを持ちながらも生後間も無くスイスに渡り、ニューヨークで美術教育を受け、現在チューリヒを拠点に制作しています。他者としてのチベットと、自己としてのチベットの狭間で、あくまで自らに身近な素材である、プラスチックや空き缶、時にはゴミとして捨てられていたものなどを用いながら、チベットとその文化、背景を捉えようとすることで、自己のアイデンティティを模索します。その作品の成立の仕方はまるで隣国の主張の狭間に成立するチベットという国そのものであるかのようです。今回の展覧会ではRossi & Rossi, London and Hong Kongの協力を得て出品が実現しました。
リー・キットは、香港に生まれ育ち、現在は台北を拠点に活動しています。他2人のアーティスト同様、あくまで自らに身近な素材である、綿の布地や捨てられていた段ボールなどを用い、誰もが見たことのあるようなインターナショナルなコスメティックブランドの商品パッケージのロゴや歌の歌詞、どこにでもありそうなストライプやチェック柄などのパターンを、あえて主張しないパステルカラーで描きます。近年は、プロジェクターを使用し実際の絵画作品の画像と現物の両方を展示して画像と実物の境界線を曖昧にするインスタレーションも発表しています。リー・キットの作品はあたかも美術作品ではないかのように佇み、他者の日常生活に静かに潜り込み、その生活に小さな違和感を生むのです。
3名のアーティストの、適確なマテリアルの使用の奥にある確信的な意思を、この機会にご高覧頂けましたら幸いです。