現代を代表する仏師江里康慧は昭和18年仏師江里宗平の長男として京都に生まれました。その後19歳で大仏師松久朋琳・宗琳師に入門、仏像制作の研鑽に励み、独立後は父江里宗平に師事しながら、仏像の原点を求めて自らの仏像表現に取り組みました。
「一刀礼拝、斎戒沐浴」という厳しい心構えで制作される師の仏像は、その内部に深い精神性を宿しています。
また夫人の江里佐代子は、仏像を荘厳する截金の制作に携わり、平成14年、57歳の若さで重要無形文化財「截金」保持者(人間国宝)として認定を受けました。また、その伝統技法を多くの人々に知ってもらおうと身近な工芸作品に截金を施す活動も行いました。そして茶道具、飾筥、衝立をはじめとして、平成17年には京都迎賓館の建築壁面装飾まで手がけることとなりました。
しかし、平成19年秋、日本文化を紹介するためイギリス大英博物館で截金の実技と講演を行った江里佐代子は帰路フランス・アミアンの地でたおれ、帰らぬ人となりました。享年62歳でした。
パラミタミュージアムでは、これまでに2回江里夫妻の作品展を開催し、その業績を顕彰しましたが、今回は大仏師江里康慧の最新の仏像とともに、当館所蔵の截金作品と平安佛所に遺された江里佐代子の截金作品とを併せて一堂に展示します。また、貴重な技法を受け継ぐ平安佛所の後継者たちの作品も一部展示します。
現代最高の大仏師による仏像と古代技法を用いた精巧な工芸作品の世界をお楽しみください。