本展は、こどもとおとながともに美術に親しみ楽しむことを目的とした展覧会「こどもとおとなの美術入門」シリーズの展覧会です。今年は、<変身>をテーマとし、美術作品にあらわされた様々な<変身>を約40点の作品によって紹介します。
「変身」は、文字どおり「身」が変わることであり、いままでの「すがたかたち」とは異なったものに変化することです。なぜ人間は「変身」に驚きあこがれるのでしょうか。今まで自分が保ってきた価値観や見方からいったん自由になりたい、という願いが「変わりたい」という気持ちをさそうのでしょうか。このように「変身」による変化、もしくは変容は、逆に私たちがもつ価値観に疑問を投げかけ、あたりまえと思っていた世界へ新鮮なまなざしをむけさせてくれます。「変身」は変わるその人自身だけでなく、変身に出会う人々の心や意識をかえていく表現のひとつということができるでしょう。
この展覧会では、美術作品にあらわれた「変身」に注目し、美術の豊かな魅力と可能性を紹介しようとするものです。
内容は、次の3つの視点から構成されます。
第1に、誰でも知っているような世界的に有名な作品が、思いもかけない作品に「変身」することにより、私たちが作品にいだいているイメージと、実際に変化している作品とのズレに注目します。名作とよばれる作品に新たな解釈が加えられ、その意味が問いかけられます。
第2に、作者自身が「変身」したり、来館者自身が変身することにより、人間の秘められた豊かな可能性に注目します。「変身」は単なる変装でなく、自分自身をあらためて確認あるいは発見する行為であり、さらに自分たちと周囲とのつながりを見つめ直す行為です。「変身」によって自分たちの内に外に生じる関わりの変化を考えようとするものです。
第3に、私たちが、ふだん何気なく目にしているもの、またもう役目を終えたと思われるものたちが、作者の豊かなイマジネーションと独創的な方法で、さまざまかたちと世界に、どのように「変身」するかに注目します。
会場では、これらの視点を交えながら展示することにより、来館者と美術表現との関係がより親密に「変身」してゆくことを目ざしています。