ポンピドゥー・センター、パリ市立近代美術館、ヨーロッパ個人コレクション…珠玉のセレクションによるパスキンの回顧展
ジュール・パスキン(1885-1930)は、エコール・ド・パリといわれる主に1920年代にパリに集った異邦人芸術家たちを代表する画家です。フジタやキスリングを親友にもち、ピカソやシャガールらも活躍した第一次大戦後の「狂乱の時代」に、パリで高い評価を受けて、次々と作品が売れた時代の寵児でした。なかでも、繊細で震えるような輪郭線と、淡くそして真珠のような輝きを放つ柔らかな色合いで描かれた女性や子どもたちの作品で人気を博しました。
しかし、パスキンの画業はそれだけでは語ることができません。ブルガリア生まれのこの画家は活動の舞台を移しながら制作を続けた旅人でもあります。まずミュンヘンで若くして素描の才能を認められ、時代と風俗を鋭く写し取った風刺画で雑誌の専属画家として活躍します。その後パリに移住し、本格的に油彩画に取り組みながら同時に書籍の挿絵なども手がけます。さらに戦争を回避して渡ったアメリカでは、精鋭な仲間や旅した中米各地の風土から影響を受けた作品を生んでいます。
本展では、パスキンの全盛期である1920年代の充実した真珠母色の作品群とともに、ミュンヘン時代の素描、初期の油彩やアメリカ時代の秀作に加えて版画やパステルなど多彩な作品およそ120点が揃います。エコール・ド・パリの貴公子、パスキンの名品の数々を是非ご覧ください。