ジャン=フランソワ・ミレー(1814-75)は、それまで絵画の主題とはなりえなかった厳しい農民の労働を見つめ、荘厳な農民画の世界を生み出した画家として知られています。その背景には、フランス初の風景画派の誕生の地となった、バルビゾン村の自然豊かな制作環境がありました。また一方で、幼い頃から育まれた自然に対する畏敬、身近な者への慈愛も、その作品を語る上で欠かすことのできない要素です。
家族や近しい人たち、大地と自然、そこに根ざして生きる人々や動物たちなど、ミレーは自らが愛情と共感を寄せたものたちをモチーフとし、暖かさと尊厳を備えた作品を描きました。そこにはノルマンディーの寒村で過ごした子供時代のまなざしや、妻と共に9人の子を育てた父親としてのまなざしを感じることができます。
ミレーの生誕200年を記念するこの展覧会では、画風を模索する初期の作品から、バルビゾン村移住後の名品まで、国内外のミレー作品約80点によりその制作の跡を追います。