1931年に東京で生まれ、今なお日本の現代美術の第一線で活躍を続けている渡辺豊重は、デビュー直後から一貫して特徴的な抽象絵画を制作しています。
作品を満たす鮮やかな色彩、画面内を軽やかに跳び回る不思議なかたち、ユーモラスなタイトルによって、見る者の緊張はほぐれ、思わず笑いへと誘われます。
彼の作品は60年代前半のモノトーンに近い抽象画、鮮やかな色彩や奇妙なかたちが登場する70年代、金地に描かれた黒が印象的な2009年以降の鬼シリーズなど、常に変貌を続けていて、2014年現在でもその旺盛な制作意欲は留まるところを知りません。しかしいずれの時代の作品においても、その根底には、形と色に対する彼独自の感性が息づいていると言えるでしょう。
本展は、渡辺の創作活動を4章に分けて、初期から最新作に至るまでの絵画や版画、立体作品など約90点を展示するものです。国内の美術館や作者所蔵品の中から選ばれた代表作を展示するほか、本展のために作家が岩手の早池峰神楽に取材して新たに制作した作品も加えて、形と色彩の魅力に富んだ渡辺豊重作品の全貌をご紹介します。1957年のデビュー以来、60年近くにわたり、「画」を「楽」しんできた渡辺の画楽人生をお楽しみください。