新見美術館は、郷土出身の故横内正弘氏から寄贈を受けた美術品約350点をもとに、平成2年11月1日開館しました。現在では約1100点の作品を収蔵しており、その中心となる富岡鉄斎の作品70点余りは高い評価を受けています。
開館25周年を迎え、これを記念して開館25周年記念企画展Ⅰ「没後90年 富岡鉄斎展」を開催いたします。
鉄斎は、幕末・明治・大正の三代に生きたわが国最後の文人画家で、近代日本美術史上傑出した存在です。天保7(1836)年、京都の法衣商を営む富岡維叙 (これのぶ) の次男として生まれた鉄斎は、10代後半のころから文人の嗜み (たしなみ) として絵を習い始め、在野の文人として活躍、89歳で亡くなるまで数多くの作品を描き続けました。その間に制作された作品は1万点以上にのぼると言われています。
鉄斎は自ら終生、画家ではなく学者であると自負し、文人の理想である「万巻の書を読み、万里の路を行く」を実践し、全国を歴遊、その知見を広めていきました。また、「わしは意味のないものは描いていない」というように、中国や日本の故事をはじめ、文学、儒学、仏教、哲学、煎茶、神仙思想などを吸収し、それらに裏付けられた作品には天真爛漫で豊かな知性と感性を見ることができます。鉄斎芸術が多くの人に共感を与える最大の魅力は、その自由奔放さにあり、50歳を過ぎてからも画風を豊かに展開させ、晩年に向かい、ますます冴えわたり、融通無碍 (ゆうずうむげ) の画境へと到達しました。
本展では、開館25周年記念企画の第1弾として、館所蔵の主要な鉄斎作品を10年ぶりに一堂に公開します。