我国では近代に至り、食器などの道具としてではなく、また茶の湯の評価からも離れて、陶磁器を美的鑑賞の対象としてとらえる“鑑賞陶器”という観念ができあがります。その中で注目されたのが「古九谷」「柿右衛門」「鍋島」でした。以来、多くの愛好家が誕生し、研究も進められ、現在ではこれらはそれぞれ独自の魅力を放ちながらも、密接に連関したやきものであることが分かってきています。
「古九谷」については未だに産地論争がありますが、一部の作品は肥前地方で作られた伊万里焼の初期の色絵磁器であることには疑いありません。中国の五彩磁器の影響を受けて発展した濃厚な色彩、躍動感あふれる大胆な構図の古九谷様式の伊万里焼は、一方では輸出需要からヨーロッパ好みの軽やかな赤の色彩が主役の柿右衛門様式へと展開し、一方では将軍献上用に格調高く仕上げられた鍋島焼に技術が応用されていきました。
今展示では、肥前磁器の精華「古九谷」「柿右衛門」「鍋島」をご堪能ください。