2002年は「国際山岳年」だということを、皆さんご存知でしょうか?人類共通の課題である地球環境問題への関心の高まりを背景に、ブラジル・リオデジャネイロでの地球サミット開催から十周年にあたる2002年を「国際山岳年―International Year of Mountains」とすることが、国連総会で可決されました。
地球の陸地面積の約5分の1を占める山岳地域の生態系は、近年急速に変化しており、これまでにない危機に直面しています。自然環境面での土壌浸食や野生動植物の生息地減少などの問題。また、社会経済面での山間地域固有の民族的知識や文化の喪失あるいは貧困といった問題。山岳地帯で急激に進む環境劣化に対し、適切な資源管理と、住民の社会経済両面での発展が早急に求められる中、「国際山岳年」は、地球サミットでの国際社会の合意の再認識と、促進・強化によって、将来にわたって山村とその下流域に住む人々の福祉を保証していくことを最終目的としています。そのためには、山岳生態系の変遷とその機能の重要性について、世界中の多くの人々が理解を持つことが不可欠です。
国連の各種機関だけでなく、各国の政府やNGOなどが参加して取り組んでいる、この「国際山岳年」に対し、立山・黒部・有峰地域といった天賦の自然環境や立山信仰に代表されるような独自の山岳文化を有する富山県でも、本県の特色を活かした各種の記念自供が計画されています。
この展覧会は、この「国際山岳年」記念事業の一環として、富山県立近代美術館の収蔵作品の中から、ふるさとの富山の山々を描いた日本画、洋画の優品を特に選んで展示するものです。ときに厳しく、ときに優しく、私たちの暮らしを見守ってくれている「ふるさとの山並み」。画家たちの眼が捉えたその優美な姿をお楽しみいただきながら、山岳の豊かな自然環境の保全について、改めて思いをめぐらせていただければ幸いです。