山口啓介は1962年に西宮市で生まれました。その後東京に移り、1985年の第17回日本国際美術展で三重県立美術館賞、1989年の日本具象版画展でグランプリ、1991年の第20回現代日本美術展で大賞を受賞。また同年には第19回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ招待部門に出品するなど、国際的にも高い評価を得ました。
1992年から1993年にかけては、ACC(Asian Cultural Council)および文化庁在外研修制度により渡米。また1995年からは、関西ドイツ文化センターとドイツ・デュッセルドルフ市との芸術交流により、デュッセルドルフ市に滞在。以後、同市と東京を往復しながら制作活動を続けてきました。
こうしたさまざまな場所での活動を通して、山口は当初の銅版画家としてのイメージを覆すような作品を次々と発表していきます。核エネルギーと環境問題への関心をもとに、銅板と腐食液によって構成されたインスタレーション「コールダーホールシップ・プロジェクト」。カセットテープのケースに天然樹脂で植物を密封し、それを立体的に構成した「カセットプラント」。そして蜂の巣やランの花などをモチーフに、シルクスクリーンの技法と自作の顔料を用いて制作された自立式絵画「コロニー」など、その関心と表現の幅はますます広がっています。
本展では、新作絵画とインスタレーションを中心に約30点を展示します。それにより、版画、絵画、立体という枠組みを超えて展開される山口啓介の作品世界を紹介します。