20世紀前半の東京美術学校には、中国、台湾、韓国などからも学生が勉学に来ていて、とりわけ油彩画技術の習得に研鑚を積んでいました。彼らは帰国・帰郷後に、激動の時代の中でそれぞれの道を歩みながら、西洋絵画芸術の東アジアへの普及に貢献してきました。しかし、その実績・功績などは今日にいたっても未だに十分に検証されたとは言えません。そこで今回は、東京藝術大学と国立台北教育大学北師美術館が共同で企画して、台湾からの留学生の主要な作品約50点を集めて、留学生たちのその後の軌跡と台湾の近代美術の展開を紹介します。日本の近代美術にも新しい視点を与える意義のある企画ですが、我が国では今日でも調査研究が不十分な分野ですから、この展覧会が今後の研究の発展への貴重な里程標になることを期待します。