このたび笠岡市立竹喬美術館では、近現代の日本画家が風景の中に見出した詩味を、自らの詩心としていかに表現したかを探る展覧会を開催します。
日本の風景は四季の移ろいの中にあります。その微妙な変化は絶えず先取りされ、人々は二十四節気という細やかな季節区分で察知します。そして、その暑さ寒さの移り行きを朝な夕なに感じ、共に語り合い、短歌や俳句に詠み、詩を綴ります。
日本画家は、日本の風景が示す美妙な表情の中に詩的情趣を見出し、さらに自らの心のうちで浄化精錬し、造形言語としてその詩心を表現します。風景画の中には大自然を壮大に描いた作品もありますが、身辺に所在するささやかな自然の息遣いを彩りの変化として捉えたものが多いように思います。
このたびの企画では、東西を代表する日本画家26人の43点を展示します。にわか雨が高木に囲まれた人家に訪れたさまを滴るような緑青で捉えた平井楳仙の《驟雨来る》(個人蔵)、深雪に閉ざされた山家にさらにしんしんと降り続く雪の静けさを表した山元春挙の《山村密雪図》(当館蔵)、鬱蒼と樹木が茂る山奥の湖辺に立ち込める霧が一気に晴れ渡る爽快さを捉えた児玉希望の《山湖雨霽》(寄託品)、屹立する冠雪の富士と大海に浮かぶ小船とを絶妙な対比で表した平福百穂の《富嶽》(寄託品)など、詩心に満ちた多彩な風景画が一堂に会します。併せて、小野家ご遺族より昨年度に寄贈いただいた竹喬遺愛の富岡鉄斎作品を展示して、文人が求めた心象山水画の世界も紹介します。
日頃親しむ竹喬の詩趣豊かな作品に思いを馳せつつ、近現代日本画家が創出した風景画の逸品を楽しんでいただければ幸いです。