平松画伯は35歳のときに「路」というテーマを自身のライフワークに決め、韓国やニューヨークなどの異国の風景や日本の原風景、ジャポニスムシリーズなど多彩なモチーフにより描きつづけてきました。
「路」のテーマは、「人間の暮らしの中と自然の中を歩き続けるうちに、次第に自身の内側から湧きあがってきたこと」と画伯自身が語るように、人と自然との関わりの中で自分の内面と向き合い、画家としての生き方の原型を求める旅でもありました。
1977年に春季創画展に出品された「路」、「路(A)」から「路」シリーズが始まりますが、この頃の作品には韓国の墓の風景が多く描かれています。当時、紆余曲折 (うよきょくせつ) を経て画家としての再スタートをきったばかりの画伯は、精神的にも経済的にも苦しい時代の心情を異国の厳冬の風景を借りて表現したといいます。その作品が春季展賞を受賞し、画家・平松礼二の新たな歩みが始まりました。
今回は「路」シリーズの中から、初期の作品をはじめ近年作に至るまで、時代ごとに主題を変えながら展開する作品をご覧いただきます。