1931年 奈良県吉野郡川上村の生まれである小西保文は、神戸芸術研究所を研修後、1957年二紀展に初入選し、その後、生涯にわたり同展に毎年出品を続けます。1966年に第20回二紀展で同人優賞を受賞、1970年には同展委員に推挙され、1977年に文部大臣奨励賞(現文部科学大臣賞)、1996年第50回二紀展では内閣総理大臣賞を受賞するなど、着実に受賞を重ねていきました。
一貫して人物像を描き続けた小西保文の作品には、どこか孤独や愁いを帯びた表情の人びとが登場します。絵の中の人びとからは、苦しみや哀愁の中にありながら、反面、生きぬくことへの強さや希望、人間同士に向けられる深い愛情を感じ取ることができます。小西氏の人びとへ向けられるまなざしが作品の中に現れています。
ヨーロッパ、ニューヨーク滞在など、国内外での滞在取材を重ね、意欲的に制作を続けた小西氏は、1999年に故郷である奈良県吉野郡川上村村営の「匠の聚」にアトリエを移すことになります。環境に恵まれた郷里での制作は順調で、各地で個展を開催するなど活動を続けていましたが、2008年7月突然病が発覚し、同年10月77歳で逝去されました。その年、提出間際まで描き続けた第62回二紀展出品作である「窓辺の家族」が小西氏の絶筆となりました。
本展では、「匠の聚」小西保文アトリエ記念館の協力のもと、小西保文の初期の作品や受賞作、絶筆となった「窓辺の家族」までの作品を一挙に展示いたします。展示室内では、作品の展示とあわせて、小西氏のアトリエ再現やオブジェの展示のほか、現在「匠の聚」在住のアーティストの作品展示なども行います。
奈良に生まれ、画業に生きた一人の洋画家のその生涯を、本展を通して体感していただけましたら幸いです。