関西ゆかりの気鋭作家が競演するアニュアル企画「Art Court Frontier (アートコートフロンティア)」の12回目。
本展は、美術界の第一線で活躍中のアーティスト、キュレーター、アートライター、ジャーナリストらが推薦者となり、出展作家を1名ずつ推挙して、ともに展覧会をつくり上げてゆくグループ展です。
今回も、多種多様な表現を模索し研鑽し続ける、10名の作家が一堂に会します。
田中幹(推薦:平芳幸浩)は、「ゼロ(0/零)」のスタンプをキャンバスに繰り返し押印し、その集散によって絵画を制作します。ゼロは消失点でありながら起点でもあり、虚無であり無限である―相反する定義がある故に含みと広がりを持つゼロの世界を、田中は作品に展開し、目視できずとも肌に触れることで認識されるごく小さな雨粒のような、微妙な存在を考察する起点として、鑑賞者の思考を深く導きます。
また、様々な支持体やオートマチックな偶然性を作品に取り入れながら制作を続ける明楽和記(推薦:今井祝雄)は、絵具を散りばめたキャンバス上に子犬の電動玩具を歩き周らせ、その痕跡によって描きだす絵画や、カラフルなピンポン球で卓球を行い、その軌跡の残像を鑑賞させるパフォーマンス、自動製造機から生まれる色付シャボン玉、展示空間の電球を何色もの色付電球に取り替え照明するインスタレーションなど、絵画の表層がキャンバスを離れ、いかなる状況においても、色彩そのものが最も鮮やかに美しく映える状態を探究しています。
「模すこと」を新たなテーマに、漆を用い陶の質感への模倣に挑戦する河井菜摘(推薦:笹井史恵)、糸やトイレットペーパーを素材に、線と線が交わることで構造物へと立ち上がってゆく過程を可視化し、時には他者と恊働しながら制作する彫刻家・中村潤(推薦:小山田徹)など、エネルギー溢れる作家たちが、幅広い素材と手法で展開する表現の数々が会場で共鳴します。
今後の活躍が期待されるFrontier作家たちによる「関西の現在」を、どうぞお見逃しなく!新人作家の登竜門以上の位置づけを担い、“関西でなければ見られない”好企画シリーズの展覧会として、本年もまた「Art Court Frontier」展にご期待下さい。(*敬称略)