表現者・長渕剛のもうひとつの顔―
長渕剛の詩画との格闘は、1996年頃から、小動物や静物など身近なものを題材に自宅で描き始め、次第に表現領域が仏の世界や心の世界にまで広がって行き、作品も大規模なものになっていった。
長渕剛の詩画の特徴は、何と言っても「速さ」にある。大作、小作品関わらず、パッと浮かんだイマジネーションを瞬時に絵と言葉に落とし込んでいく。その様を本人は「瞬間を射止める」と表現する。
音楽が、再現可能な芸術だとすれば、詩画は一度きりの表現。音楽家・長渕剛とはまた違った顔が垣間見られるのが、この詩画においてである。
今回タイトルにもなっている「殺気」は、2012年12月に制作を始めるにあたって、最初に湧き出た言葉、イメージだ。2011年の震災活動において、本気から狂気、そして殺気へと気位を高めて覚悟を持たなければ目の前の現実に到底太刀打ちできなかったという経験が生々しく反映されている。観覧平均約1時間に及ぶ今回の詩画展を経験していただければ、一見おそろしい言葉の裏に、燦然と輝く希望と未来を感じ取っていただけることと思う。2013年からスタートした8年ぶりとなる今回の第5回詩画展「殺気」は、東日本大震災を経験し、心のより深い部分からあふれた新作と選りすぐりの過去の作品、約100点にもおよぶ大規模な作品展となっている。
2014年ようこそ、ギターを筆に持ち替えた長渕剛・詩画の世界へ。