芸術家はつねに孤独のど真中で無と対決している。そこに、色・形・響きがわきおこってくる。
─それは絵ではない。それ以前であり、以後のものだ。
岡本太郎の作品が、同じ時代のアーティストの作品のなかにあって、とびぬけて目立って見えるのは何故でしょうか。色オンチとか、下品とか、いやったらしいとか、さんざん悪口もいわれてもいますが、強烈な作品の印象は「芸術は爆発だ」と唱えたエネルギッシュな太郎そのものです。このエネルギーはいったいどこからくるのでしょうか。
ひとつは色彩です。絵具のチューブを絞ったままのような原色。極彩色にいろどられた絵画は強烈な印象で、ときに違和感を感じる人もいるかもしれません。
そして岡本太郎ならではの独特のかたち。金平糖のように全方位につきだすトゲは、よく見ると人の腕や顔のかたちだったりもします。360度どこから見てもいいように、彫刻の後ろにも顔をつけるところは、岡本太郎のサービス精神でしょうか。
さらにこうした色や形といった要素が、おだやかに調和するのではなく、不協和音をかなでるのも岡本作品の特色です。太郎のテーマである「対極主義」は、同じ画面の中に正反対のものを置いて、磁石のように反発するギリギリとしたエネルギーを生み出すことを意図しているのです。
岡本太郎は、「絵はすべての人の創るもの」と述べています。絵を描くことだけが、創造じゃない。絵を見るとき、見る人の心のなかに映るのは、作家が制作した画面の色や形ではなく、見る人のイマジネーションによって創りだされたイメージであり、芸術を味わうことは価値を創造することそのものであると。岡本太郎の造形が、あなたの中にどのようなイメージを喚起するのか、作品との対話をどうぞお楽しみください。