大谷コレクション肉筆浮世絵は、重要美術品4点を含む質の高さ、状態の良好さと、江戸時代各時期の作品が系統立って充実していることから、高い評価を受けています。1995年には講談社から『肉筆浮世絵大観8 ニューオータニ美術館』として、浮世絵研究に必須の大型本も刊行された、優れたコレクションです。
当館ではこれまでさまざまな趣旨のもと、これら肉筆浮世絵の企画展を開催してまいりました。本年は「寿-ことほぐ-」「楽-たのしむ-」「装-よそおう-」「想-おもう-」の4つのテーマに沿って、絵に込められたメッセージなどをわかりやすく解説しながら江戸時代の文化をご紹介いたします。
主な作品として、テーマ「寿-ことほぐ-」では、夏の夕べに飛び交う蛍を捕まえようとする、躍動感あふれる二人の女性の姿を描いた北尾重政の「ほたる狩図」や隅田川に舟を浮かべ、雪景色を見ながらくつろぐ美人の姿を描いた蹄斎北馬の「美人雪中舟遊図」、「楽-たのしむ-」では、浮世絵美人誕生の母胎になったといわれる、金箔地に舞い踊る美人の姿を描いた「舞踊図」(重要美術品)、「装-よそおう-」では、艶のある長い髪を手入れする女性の姿を、濃厚な色彩で表現した魚屋北渓「洗髪美人図」、「想-おもう-」では、室内で琴を弾き、画を描いて楽しむ男女の姿をたおやかな筆致で描き出した伝菱川師宣の「元禄風俗図」や禿(かむろ)を連れたしっとりとした美人を描いた「小むらさき図」などを出品いたします。作中に漂う日本独自の美意識を再認識してみてはいかがでしょうか。
また、今回は特別に幕末に活躍した浮世絵師、歌川国芳、豊原国周による錦絵も出品いたします。これらは大変保存状態が良く、当時の鮮やかな色彩をそのまま楽しんでいただけます。
本展覧会において大谷コレクションの粋をお楽しみください。