深遠な広がりを持つ漆黒の世界と、繊細な線の重なりによって放たれる、金色の輝き―。髙橋節郎の漆芸作品は、ときに貝殻を嵌め込んで磨き出す螺鈿技法や、色漆を使った濃密な色面なども用いながら、さまざまな表情で私たちに語りかけてきます。
現在の安曇野市出身である髙橋節郎(1914-2007)は、自由な発想と感性によって、生涯漆芸技法の探求を続けました。生誕百年を記念する本展覧会では、見る者の遠い記憶の一端を照らすような、幻想的な空間が広がる平面作品や、漆の質感と形態の魅力とが存分に発揮された乾漆立体作品など、初期から晩年までの代表作を展示します。さらに、漆芸作家としてだけでなく、芸術家としての表現を追求した髙橋の姿勢がうかがえる墨彩画や漆絵版画、エッチング作品のほか、初期に手がけたクラフト作品や素描等もあわせて展示。100点を超える作品で、髙橋節郎の深遠な作品世界をご紹介します。