このたび笠岡市立竹喬美術館では、近年に新たに発見された小野竹喬の作品と、長らく所在が不明であった竹喬作品を集めた特別展を開催します。
小野竹喬(1889~1979)は、14歳から日本画を描き始め、89歳で亡くなるまで制作を続けました。この75年間の制作の日々は、必ずしも順風満帆ではなく、自らの創作上の行き詰まりや健康の不調、また家族や社会など身辺の変化により、中断を余儀なくされることも多かったと推測されます。そして何よりも、1941年より確認される作品の描き替え(鑑定などで持ち込まれた作品のうち不本意な旧作を破棄して、新たに制作して渡す作業)に大きな労力を注いでおり、竹喬の後半生は自らを厳しく律する過酷な日々でした。
竹喬美術館は、1982年の開館以来、竹喬の生誕記念展を10年ごとに開催し、この企画のたびに、新出の竹喬作品を紹介することに努めてきました。2009年から翌年にかけて開催した生誕120年の記念展は大きな反響を呼び、これを契機に従来知られていなかった、もしくは永く行方が不明であった作品に関する情報が竹喬美術館に寄せられました。
このたびの特別展は、生誕120年展以後のいわば新発見、再発見の竹喬作品をご紹介しようとするものです。これらの作品の中には、あるいは竹喬にとって不本意な作品も含まれているかもしれませんが、その時々に真摯に制作に取り組んだ姿を垣間見ることができます。また、これまでの竹喬芸術の理解に新たな要素を加える作品も含まれています。約70点の作品により、竹喬芸術の多様な展開をお楽しみいただければ幸いです。