肖像彫刻(少年、少女、大人男性)、犬の4点を展示予定しております。
少年を彫る―肖像彫刻は私の作家としての仕事の核になっていますが、肖像彫刻で今の時代今更何が表現できようかということは、常に自分に問いかけています。
新しい造形を求めて、肖像を人間に限定せず、動物や植物など様々なものを彫ってきましたが、実際の制作の現場では、形の大きさや色のこだわりなど、物理的な所作ばかりに気が回ってしまうのも正直事実です。
自分が永年追い求めとめてきた日本美術。とりわけ鎌倉時代の運慶作とされる俊乗房重源像や無著、世親像。唐招提寺の鑑真和上像など一個人の肖像を越え、普遍性をものにしています。
もちろんそこには宗教という信仰が付加しているのは承知の上で、これらの肖像彫刻がもつ普遍性に少しでも近づきたいと思っています。
今の時代のリアリズムを表現するには、私だけの思いで作るのではなく、生き様が共感できるモデルを見つけた段階で作品作りの半分は終わるようです。作品を自分に届けるのではなく、モデルを通して人に届ける思いで彫ると、物理的な所作のこだわりは、薄まる気がします。目の前の作品を普遍という別の時間軸に移動するのは、技のリアリティでなく、技を突き詰めた先にある慈愛なのだと気づくこの頃です。
三輪途道