いつの時代も人々は、あらゆる煩悩や心痛からの回避、あるいは、切なる願いの実現のために、人知を越えた存在に対して祈りを捧げてきました。それは、人種や老若男女を問わず、万国共通のものです。
日本においては、古来より信仰されていた神道の信者が現在でも大多数を占めており、地鎮祭や五穀豊穣を願ったお祭りなどに代表されるように、万物に紙が宿るという八百万の神の概念が、今もなお人々に強く根付いています。明確な教祖を持たない神道は、それゆえ、仏の力によって疫病や災難から逃れようとした仏教や、室町時代末期に日本へ伝えられたとされているキリスト教といった異なった宗教も、容易に享受してゆき、現在では様々な宗教の習慣がすっかり私たちの生活に溶け込んでいます。
本展覧会では、日本における信仰の軌跡を辿るとともに、国境や文化を越えた祈りの世界をご紹介いたします。これらの世界に触れていただき、変化の激しい現代社会の中で忘れがちな安らぎを体感する機会となっていただければ幸いです。