タカ・イシイギャラリー(東京・清澄)は5月25日(日)から6月21日(土)まで、荒木経惟個展「左眼ノ恋」を開催いたします。タカ・イシイギャラリーでの21回目の個展である本展では、最新の撮り下ろし作品よりセレクションした作品65点を展示いたします。「左眼ノ恋」という題名は、エド・ヴァン・デル・エルスケンが1954年に出版した写真集『セーヌ左岸の恋』(LoveontheLeftBank、1954)の題名にかけています。荒木は20歳の頃に『セーヌ左岸の恋』の写真集を見て、女性に同じポーズをさせて写真を撮っていました。本展は、荒木のエルスケンへのオマージュでもあります。
昨年10月、右眼網膜中心動脈閉塞症により右目の視力を失った荒木は、以前と変わらない精力的なペースで、昨年末から今年にかけて写真を撮り続けました。数百点にも及ぶイメージで構成された本シリーズでは、撮影したポジフィルムの右部分を黒マジックで塗りつぶし、そのポジから写真をプリントしています。写真はそのまま左眼と右眼の視界を投影し、右側部分は翳りのある視界を表しています。
前立腺癌を乗り越え、その後右眼の視力を失う事実に直面しても、「死はこっちに向かって来るからね。こっちからは向かいたくないじゃない。来るんだよ。吹き飛ばさないとだめだぞ(笑)」という言葉通りに、精力的に撮影を続ける荒木の現在を映す本シリーズは、「写真=人生」ととらえる写真家の宣言といえるでしょう。この機会に最新作品をどうぞご高覧下さい。また、展覧会に合わせて作品集を刊行いたします。