「信楽焼:SHIGARAKIYAKI」といえば滋賀県の生み出す地場産業製品の代表格で、その知名度は高く、国内はもちろん広く海外にも認められています。長らく伝統的な生活用品を生産してきた信楽は、戦後になって新たに造形的な要素を追い求めた陶芸作品も制作されるようになりました。
1939年、伝統陶芸の産地である信楽に生まれた笹山忠保は、若い頃から常に新しい感覚による造形やデザインを求め、流れの先端を切り拓くかのように現代的な陶による造形作品の制作を果敢に続けてきました。1960年代初め、岡本太郎による東京オリンピック競技場の陶壁製作への参加に始まり、サム・フランシス、ロバート・ラウシェンバーグなどアメリカ現代美術作家との信楽での交流、八木一夫らが創設した前衛陶芸グループ「走泥社」への参加、さらには造形作家のイサム・ノグチとの出会いなど、著名な芸術家との交流を通して生み出された笹山の現代的な作品の数々は新鮮で不思議な魅力にあふれています。
当館では開館30周年記念企画として「現代陶芸 笹山忠保展 ―反骨と才気の成せる造形―」を開催します。本展は笹山がこれまで歩んできた作家としての道を検証し、現代陶芸の世界や地元信楽へ与えた影響を作品と共に探り、1960年代から最新作まで笹山が創作し続けた現代陶芸作品約100点を展示紹介するものです。
開館30年を経た今、この企画をきっかけに当館で開催してきた多くの現代美術の企画展を総括し、これからの滋賀県立近代美術館が担うべき役割を展望できれば幸いです。