一見無関係で遠いものに思える前衛美術と子どもの絵本。実は少なからず接点が見られます。20世紀初頭、ロシア・アヴァンギャルドの美術家達は積極的に子どもの絵本を描きました。ダダにおける既成概念の否定や自由な精神の解放は、そのまま子どもの無垢な世界に繋がり、抽象の造形はある意味子どもの感覚に近いとも言えるでしょう。また、特に大正期から昭和初期の子どものための絵本や絵雑誌では、前衛的な活動を行う作家による生新な表現が試みられ、戦後の「具体」の活動では、子どもの感覚や表現に通じるいくつかの要素を見ることができます。さらに、現代の美術家たちにとって、絵本は新しい表現媒体でもあります。
本展では、前衛的な活動とともに子どもの絵本を描いた20世紀の国内外の作家を取り上げ、絵本、絵画、立体作品、版画など多彩な作品を通して、両者の豊かな接点をご覧いただきます。