板橋区立美術館では、開館以来、昭和の前衛絵画作品の収集、研究、展示を行ってきました。「池袋モンパルナス」と呼ばれる地域に暮らした、井上長三郎、寺田政明らは、戦後板橋に移り住んだこともあり、その中心となっています。昨年の館蔵品展では「日本近代前衛絵画史―激動の時代・画家のまなざし」と題して1910年代から40年代の作品をご紹介しました。この時期に日本では、ダダイスム、フォービスム、シュルレアリスムといった海外の新興美術に影響を受けた作品や、ロシアのリアリズム絵画に影響を受け、プロレタリア運動と共に弾圧を受けたプロレタリア美術などが発表されています。今回は、「焼け跡と絵筆―画家の見つめた戦中・戦後展」と題し、戦中から戦後の混乱期の絵画をいくつかのテーマに分けてご紹介します。戦争が激化し、絵画の発表も自由に行うことが難しくなり始めた頃の前衛絵画作品、戦中に発表された作品、戦後の焼け跡を描いた作品、人体を描いた作品や、戦後世代の画家たちによる新しい絵画、社会問題を告発するルポルタージュ絵画まで、幅広い関心と技法による作品をまとめてご紹介いたします。また、昨年度新たに寄贈を受けた田中佐一郎が焼け跡を描いた《池袋》、1930年代中頃にシュルレアリスムや抽象芸術に影響を受けて制作をした、永井東三郎の《海辺》《作品B》や関連資料も展示いたします。
また、今回は深井隆の木彫作品を特別展示いたします。板橋区在住で、国内外で作品を発表している深井の彫刻は、ソファーや翼、馬などをモチーフに、観念的な空間を創りあげています。木彫の造形の美、質感をお楽しみください。