清川泰次(1919-2000)は静岡県浜松市に生まれました。実家は、米や味噌などを扱う商店を営んでいました。1936年、清川泰次は上京し、慶應義塾大学経済学部予科に入学します。そして写真部に所属して写真を撮る一方、油絵も描くようになります。清川泰次が本格的に絵の道に進むきっかけになったのは、二科会に所属していた織田廣喜との出会いでした。織田の絵画へ取り組む真摯な姿勢に感動した清川は、画家として真剣に絵の制作に取り組み、1947年、二科展に初入選しました。この頃の清川泰次の作品は、人物や静物などが描かれた具象的なものでした。しかし、戦後、様々な美術表現が台頭してくるなか、清川泰次は従前的な具象的表現に対して、疑問を持ち始めるようになります。そして1951年、清川泰次は、当時、抽象絵画の潮流の中心であったアメリカへ渡り、3年間過ごしたのち帰国し、精力的に実験的な作品の発表を始めます。それらの作品からは、次第に具体的なイメージが消え、彼の創作は抽象的な表現へと変化していきます。そして、晩年に向かうにつれ、画面は幾何学的な形体によって構成されていくようになります。
本展では、初期の写実的な表現の作品から、晩年の幾何学的なかたちで構成された作品まで、油彩作品など約15点にデッサンなどを加え、清川泰次のかたちに対する捉え方の変遷をご紹介します。また、小展示室では、清川が大学生時代に撮影した写真も併せてご紹介します。